2020年2月12日水曜日

アポロン カセットライブラリ 古事記

アポロン音楽工業の「アポロンカセットライブラリー」のうち、「古典文芸シリーズ」31巻の1つ『古事記』。菅野雅雄:解説、朗読朗詠は高崎正秀、音楽は池辺晋一郎。

解説の内容は、古事記の雄略天皇のくだりの話で、引田部の赤猪子の話は、20年以上前に聴いて印象深いものとして記憶にあったもので、少女は老婆になるが天皇は年をとらないといふ話。他に吉野(乙女舞)や葛城(一言主神)の話。

久しぶりに一部を聴いてみたら、解説の声が記憶のイメージと違ってゐた。
テープの声はバリトン風の良く透る美声で、聴きやすいが、抑揚が下向きで少々ビジネスライクにも聞える。
記憶の中では、ハスキーで上向きの抑揚が外へ広がるようなロマンチックな感じで、どうも『一千年目の源氏物語』の伊井春樹氏の声と混乱してゐたのかもしれない。
「抑揚の内向き、外向き」とはここで思いついた独自な表現なので、読み手に伝はるかどうか心もとないが、文字で表現するのは難しい。

「古典文芸シリーズ」の解説は、中村真一郎の源氏物語3巻、王朝女流日記2巻、池田弥三郎の伊勢物語、枕草子、土佐日記、井本農一の奥の細道2巻、芭蕉蕪村一茶、など豪華メンバーである。



2020年1月17日金曜日

丸谷才一の「新しい種類の自伝」

丸谷才一『挨拶はたいへんだ』の巻末対談(文庫判解説)で、井上ひさし氏がいふには、
「挨拶のなかのお身内の葬式や結婚披露宴の挨拶で、丸谷さんの私的な歴史が次々に出てくる。…… 結局これは、新しい種類の自伝という感じがあります」といふ。そこで、井上氏のいふ「新しい種類の自伝」を整理してみよう。

 丸谷氏は、1925年、「丸谷熊次郎・千の次男として生れた」(「ゴシップ的年譜」*0)。父は産婦人科の開業医。丸谷氏が医者にならないと決めたことについて、「地方の医者の息子は医者になるのが当り前みたいに見られてゐます。その中でこのことを決心するのは、ちょっと大変でした。」(「幼いころの4つの願ひ」*2)といふ。
恐らく長男は夭逝(昔はよくあった)したため、実質的には彼が「長男」だったので、「決心する」のは「たいへんだった」と想像する。母にとって腹を痛めた唯一の子であるといふのもあるかもそれない。
「わたしは腹ちがひの姉二人にかはいがられて育った」(「賢く優しかった姉」*3)といふ姉二人は、13歳と10歳違ひ。年の離れた弟の丸谷氏は、父が44歳のときの子で、父64歳のとき息子はまだ20歳なので、直接の継承は大変になるであらう。
 丸谷医院を継承したのは、長姉の夫であり養子となった八郎氏で、「兄」と呼ばれる。兄は戦争中、軍医として5年間従軍し、帰郷したとき長女は10歳(「身内の書いた本の読後感」*2)。1945~46年とすれば、結婚はその11年以上前、1935年以前になり、1935年は丸谷氏10歳で姉23歳。10歳で「決心」を迫られたわけでもなからうが、中学生のころ兄の蔵書の『ドイッチェ・イデオロギー』などを興奮しながら読んだ(「辛い思ひ出を語らなかった男」*3)といふから、兄は結婚当初から同居してゐたのだらう。10歳の子が「医者にはならない」と言ったとしても、それをそのまま大人が受け取ることはないので、兄は独立の可能性もあったであらう。
ちなみに私の町でも、離れた場所に診療科目が同じで同じ苗字の「○○医院」を何組か目にする。町医者の後継者問題は、地域社会にとっても重要な問題なので、安全策がとられることはよくあることで、戦後の人口増の時代には、そのまま2軒の医院になっても不都合はなかったらう。丸谷氏が進学先に医大を選ばなかったことによって、このことは最終的に確定したと思はれる。
 「家には、住み込みの産婆さんに看護婦さんとお手伝いさんや通いの看護婦さんたちもいて賑やかでした」(「丸谷才一叔父の思い出」*4)と姪がいふから、かうした家を切り盛りするのは、母や姉の力によることが大きいのだらう。姉が残るのが一番うまくゆく。父の再婚といふのも、女性の力が必要だったためもあらう。
 兄は、長女が中学2年の1年間は、大阪の病院に勤め親子で大阪住ひだったが、翌年鶴岡に戻った。戻ったのは1949~50年ごろか。丸谷氏は東京で大学生暮らしである。姪の彼女は、大阪で見た歌舞伎に感動し、鶴岡に戻って丸谷氏の本棚から歌舞伎の脚本を何冊か見つけて夢中になって読んだといふ。彼女の回想の文章(*4)の、屈託のない明るさや叔父自慢は、いかにも女系家族特有のものである。
 父とは44歳違ふので場合によっては祖父のように見られようし、姉は13歳も上の大人、姪は10歳ほどの差なので妹のようなもの。1938年頃の家族構成を見てみる。
 父 57歳 院長で多忙
 母 44歳
 兄 養子 29前後?
 姉 26歳
 次姉 23歳(「銀町の姉」*1)
 才一 13歳
 姪   2~3歳?
 産婆さん 住込
 お手伝ひさん 住込
 看護婦さん 住込
まさに女系家族である。折口信夫の家族構成と比較してみたいところである。
兄のように慕った従兄弟の山本甚作は、23歳で東京美術学校在籍中。山本氏との関係は「兄のような従兄弟」(*2)で語られる通りだらうが、兄八郎氏との関係は、もっと深読みが必要だらう。

 参考資料
*0 群像日本の作家丸谷才一(小学館)
*1 挨拶はむづかしい(朝日文庫)
*2 挨拶はたいへんだ(朝日文庫)
*3 あいさつは一仕事(朝日文庫)
*4 文藝別冊丸谷才一(河出書房)

2019年12月7日土曜日

ブクログの「遥音亭の本棚」

ブクログのシステムの「遥音亭の本棚」へ、文章に手を入れて、記事を移動の予定。

遥音亭の本棚
https://booklog.jp/users/showmu?display=front
遥音亭の本棚 ブログモード
https://booklog.jp/users/showmu?display=blog

ただし、ブクログで扱えないものについては、この遥音亭主人で続ける予定。



2018年7月14日土曜日

地名の研究 (講談社学術文庫) Kindle版

柳田國男の『地名の研究』は、日本の地名研究のための最も重要な本であり、
今年の2月にも、このブログでとりあげたのだが、
 柳田国男『地名の研究』
そのとき、「電子化されてあれば、地名のデータベースに」などとと書いた。最近、講談社学術文庫版が、amazonで電子書籍(Kindle版)として販売されているのを知った。
amazonのKindle版については、検索などの動作が遅いという評価が多いようだが、不満を感じるようであれば、別の電子本の形式に変換するツール類も、ネットで容易に手に入れることができる。

2018年6月15日金曜日

日本歴史大事典(小学館)と電子辞書

だいぶ前に岩波日本史辞典CD-ROM版を買ったとき、この程度なら、平凡社世界大百科事典のほうが内容が良いと思った。
最近、シャープ 電子辞書 生活総合モデル PW-SA2(2014年) を中古で買ったら、日本歴史大事典(小学館)とブリタニカ国際百科大事典などが付いていた。日本歴史大事典はさすがに詳しい。

大型本で何冊もある事典は、電子辞書のほうが良いと思う。中古なら数千円程度。日本歴史大事典は古本でも同じ程度の値段。
乾電池式と違い、充電式のものは中古となるとバッテリー能力が心配だったが、良い中古品に当たった。
シャープの電子辞書は、電子ブックのコンテンツをダウンロードできるが、目次ジャンプなどは生かせないので、テキストファイル形式をPCからコピーすれば十分。

2018年5月24日木曜日

『日本残酷物語』平凡社

これも「講座本」で全5巻と別巻2冊。1960年ごろで、映画の題名より先。
近代合理主義によって失われたものがテーマである。近年に再刊された。
近世史を考えるために10年ほど前に入手。

宮本常一『忘れられた日本人』のなかの「土佐源氏」も再録されていたと思う。そのほか。
分担執筆なので良質でないものは一部は飛ばし読みになるが。
夫婦で一生懸命働いて田畑を購入して増やすことが生き甲斐だった老婆に、戦後の農地解放は理不尽なものであったという話。戦後の農地改革は功罪半々とみるべき。


2018年5月15日火曜日

風土記日本(平凡社)

自分で「講座本」という分類名をつけている本。
平凡社の『風土記日本』は、かなり評判だったシリーズで、最初は1957~58年のハードカバー。1960-61年ごろ軽装版が出され(画像)、それを1990年代に6冊入手して、通読。こういうシリーズものを全て読了したのは他にないかもしれない。

一つ書くとするなら、江戸時代に村の入会地だった山林が、明治新政府に没収された例が多いのは、東日本、とりわけ東北地方であるという。なぜかというと東北地方は「賊軍」とされたからである。西日本では山林は私有地になっていることが多いそうだ。明治以後の「貧しい東北の村」のイメージができてしまったのは、それが原因だという。
そうした日本の山林は、満足な測量もされずに登記もあやふやなのだと、司馬遼太郎の対談集にあった。高速道路の用地買収などはどのようになされたのだろう。

6巻の他に索引の巻があることを知り、1958年版をセットで入手したが、だいぶあとのことなので索引は有効利用していない。

国有林はたしかに東日本に多く偏っている。次は林野庁ページ。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/welcome/bunpu.html

2018年5月14日月曜日

講座日本風俗史(雄山閣)

最近入手の本だが、昭和30年代の「講座」風の本のなかには、良いものがいくつかあり、これもその1つ。
「風俗史」とは今は聞き慣れないかもしれない。今は、衣服などは服飾史、民具は民具史など別々になっているようだが、そのほか衣食住、芸能や娯楽、祭礼や行事、村や町の仕組み、旅風俗や性風俗まで、社会生活全般が対象となるようである。それらが、大きめの図版を大量に掲載し、池田弥三郎、和歌森太郎らによって語られる。
江戸時代のことがより多く語られるのは、明治時代的近代に「失われたもの」がテーマだからであろう。(全12巻、ほか別巻8冊)

2018年3月24日土曜日

絶景本棚(本の雑誌社)

残しておきたい本というわけではないが、今年2018年の新刊。新聞で紹介されていた。
34人の有名無名の人の本棚を撮影した写真集。2~3人の名前しか知らなかったが、最近のライターの方々だろう。古い言葉だが「白い本」が多い。国語教師のK氏の本棚で、数冊の知ってる本があったが、他はあまりないので、がっかりした。
購読の動機は、自分の本の整理方法のためのヒントはないかということだった。
34人は4タイプに分類されていて、実に整然と分類されている方もいる。特製の本棚で奥行きの少ない本棚、本の背が平らな壁のようで……これはなんとなく強迫感がある。
自分のタイプは「泰然自若」型であろう。きっちりしていないということ。雑貨・小間物なども並べてある。
しかし、どのお方よりも、自分の本棚は雑貨類が多い。34人のうち撮影のときに片付けたお方もあるのかもしれないが、ともかく、それらを整理することが、第一歩かもしれない。

2018年2月26日月曜日

新編国歌大観 CD-ROM版

新編国歌大観 CD-ROM版 角川書店。1996年、Windows95時代のもの。
定価28万円。現在のDVD-ROM版は16万円ほど。
古書として当時の1/10近い値で最近入手。
ちなみに当時、某百科事典も30万円ほどだったのがWindows XP 時代に5万円になった。

CD-ROMの中身を見ると、メインのデータファイルが220メガバイト。これに45万首の歌や序文などが入っている。別に解題文書のファイルが80メガ。計300メガバイトは、CD-ROMの容量の半分近いので、たっぷり入っているということだろう。ファイルには、文字や文章はシフトJIS形式で入っている。外字の数も多いようではある。
Windows時代のテキストエディタQXなどは、150万行のテキストファイルの編集ができる。
150万行とか28万円とか、大変な数字の話になった。