2018年2月22日木曜日

柳田国男『地名の研究』

1968年以前の本は、すべて、後の時代に(多くは古書店で)購入した本である。

柳田国男『地名の研究』(角川文庫 1968)

読了後、くりかえし拾い読みしているが、気になることがらがいくつもある。
たとえば、コマという地名は、川の中流をさかのぼって低い山地に入ってすぐに小盆地があるというような地形の、その小盆地あたりを言うのだとか、これはどうも武州入間郡の高麗郷のことと思える。コマという地名が先にあったと言いたいのだろう。
その他いろいろ。

青空文庫で読めると良いのだが。電子化されてあれば、地名のデータベースになる。

2018年1月28日日曜日

『発掘狂騒史 ~「岩宿」から「神の手」まで』

『発掘狂騒史』(上原善広著、新潮文庫)は2017年の文庫だが、2014年の『石の虚塔』の文庫化。
2000年の旧石器捏造事件についても書かれてあるが、
群馬県の岩宿遺跡を発掘した在野の研究家、相澤忠洋のドラマチックな生涯についてよく書かれていた。旅芸人の父は旅に出て、母がある日家を出てから、兄弟は離れ離れで親戚に預けられる。出征直前の母との再会もあったが、戦後は自転車で行商をしながら石器を拾い集め、やがて発掘に熱中して妻子や生活を返り見ず、資産家の女の援助を受けるなどという話。日本には旅芸人などの定住しない人たちの文化というものが確かにあったというのは、宮本常一などもいうとおりで、そうしたかすかな昔の力が感じられ泣くもない。
捏造事件については特異な粘着性のある子弟関係の歪みといった印象。

2018年1月26日金曜日

『農地を守るとはどういうことか - 家族農業と農地制度 その過去・現在・未来』

農地は、どういう人がどのように所有すべきなのか。
戦前の大地主については、世間では誤解している人も多いようだが、問題なのは、田畑のある村に住まず、農業もせず関わらず、都市に住んで農地だけを所有して経済効率しか考えなかった者たちなのである。在地の小地主たちは、村の役などを引き受け、農地が外部の者に渡ることを共同で阻止してきた。この本では、東北地方のそのような例が書かれていたが、全国的に普通のことだったのではないか。江戸時代に、土地の賃貸や売買には村の名主の同意を必要としたのは、土地が渡る相手についての吟味が行われるようにである。
この本は良い本だが、江戸時代についての見方を示していないので、そこが弱い。
戦後の諸問題については、略。
『農地を守るとはどういうことか』楜澤能生、農山漁村文化協会、2016

2018年1月25日木曜日

篠田謙一『DNAで語る日本人起源論』 について2

1970年からの1年1冊の新刊本をとりあげてきたが、2015年は、篠田謙一『DNAで語る日本人起源論』 (岩波現代全書)。
これは前にも取りあげた。
それに付け加えると・・・
そこではインド北東部のことを書いたが、その先はタミル地方とつながるような気もする。タミル地方には北方から移住してきたという伝承があり、インダス文明はこの系統の人たちによるものではないかという説もあるそうだが、インド東北部の古代文明のことはよくわかっていない。
女性のミトコンドリアDNAについては、日本列島と朝鮮半島、遼東半島、山東半島に共通項が多いそうだが、縄文海進以前の、東シナ海の大陸棚が陸地だった時代の、その大平原のことがわかると面白いと思う。揚子江を下ってきて河口から東を眺めれば、九州の笠沙の岬がよく見えたはずだ。近いのだから渡るのは簡単なことである。


2018年1月24日水曜日

『川はどうしてできるのか』藤岡換太郎、講談社

『川はどうしてできるのか』という書名だが、川ができてからの、時には億年単位の長い変遷の話が面白い本である。
「一」の字に流れていた川が、断層がずれて「Z」の字のように曲って流れる川。四国の四万十川のように標高の高い山岳地帯を大河が蛇行しているのは、土地が隆起したためであるとか、百万年以上の単位の時間を感じることになる。
中国大陸では、大陸移動で小大陸が移動して衝突した境界が大河になっているというので、日本国内とはスケールが違う。
天竜川の上流は、犀川とつながっていて、そのころの犀川は南へ流れていた可能性もあるらしいとか。
藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス 2014年

2018年1月23日火曜日

落語ファン倶楽部 Vol.20 談志と志ん朝

古今亭志ん朝と立川談志の昔の対談などが掲載されていたと思う。
2000年を過ぎたころからの落語ブームがあり、2007年に『古今亭志ん朝特選独演会』というセット販売のCDが出たのだった。
蔵書リストを見ると、、1992年から1996年までの5年間は落語関係のものがないので、落語の低迷期だったのだろう。所謂差別語問題に悩んだ時期だったらしい。
2013年9月の白夜書房のこの本のあとは落語関係のものは買っていない。

2018年1月22日月曜日

『寺社の装飾彫刻 関東編〈上〉東京・埼玉・群馬』

若林純・著、日貿出版社、2012。
神社仏閣の本殿や本堂の外側の壁面などを飾る彫刻の写真集(全カラー)と解説。
彫刻の図案は、何かの伝説物語の一場面を描いていることが多いが、最も多いのは中国の二十四孝の伝説だろうが、この本にはそれほど多くはなかった。実際に少なかったのか、多才な図案を載せる方針だったのかは不明。
参考ページ http://nireyama.main.jp/koten/24ko.htm
「東京・埼玉・群馬」は、栃木・茨城・千葉とは方言が少し違い、ぶっきらぼうで威勢が良い地域である。こういう分けかたは正解なのかもしれない。

2018年1月21日日曜日

『まんが落語ものがたり事典』勝川克志

落語の漫画化には、大手の講談社から出版された高信太郎『マンガ傑作落語大全』が、4冊を数え、文庫化もされ、人気が高いようである。ただ短い噺ばかりという制限があったようで、短くまとめにくいような有名な演目が欠けていたりする。
勝川克志『まんが落語ものがたり事典』は、2011年、くもん出版の発行で、350ページの厚さに41話、書下しなので長い噺には多目のページを当てている。漫画の1コマを当てた「豆知識」の解説は、今は勝川だけが継承している技法である。

落語の漫画化本は、前谷惟光、滝田ゆう、辰巳ヨシヒロ、ジョージ秋山などを読んだことがある。

2018年1月20日土曜日

『お世継のつくりかた』鈴木理生

東京の日本橋あたりの老舗の大店の御隠居さん多数を集めた企画の座談会で、元の店主だった彼ら全員が婿養子だったことに、司会をつとめた著者は驚いたという話が前書にある。
多いとは聞いていたが全員ということだった。
息子である若旦那は裕福に育っているので、大店の経営は任せられない。時代小説などでは、それがわかっていないものは多いのではなかろうか。

この本だったか記憶が定かでないが、長屋に嫁が来るのは稀なことで、女房の貸し借りも行われ、子は自分の子かもしれないと思うと長屋中で親切にするものだといい、長屋暮らしの人情味は当然となる。
それなら地方でも、間引きが多かったので地方人の信仰心が厚くなるのは当然かもしれない。
鈴木理生『お世継のつくりかた』副題:大奥から長屋まで 江戸の性と統治システム。ちくま学芸文庫 2010

2018年1月19日金曜日

『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』

黒岩比佐子著、角川ソフィア文庫 2009 『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』
聾唖の写真家・井上孝治の写真を多く掲載した本である。

「音のない記憶」とあるが、別の種類の音が聞こえてくる本でもある。
掲載写真は、事前に知識を与えられてから見るわけだが、
子供たちが外を走り回って遊んでいた昭和の時代の、遥かな音が感じられたと思う。